警戒心MAXだったのに、御曹司の溺甘愛に陥落しました
車に乗り込んだものの、天野さんの視線が私の全身を行ったり来たりしている気がして運転席の方を見られない。
やっぱりいつもと違いすぎておかしいんだろうか。浮かれて気合い入りすぎた格好に困ってしまったとか?
いたたまれなくなり、つい「なんですか?」と弱気な声が出る。
「いや、悪い。本気出すとえげつないのな」
「はい?」
「なんでもない。行くか」
「どこに行くんですか?」
「内緒」
そう笑った天野さんがゆっくりと車を発進させた。
初めて見る彼の私服。テラコッタカラーのトップスに黒いパンツ。グレンチェックのチェスターコートを羽織っていてとてもオシャレ。
車内で流れるのもよくわからないけどオシャレな洋楽。全部にドキドキさせられるのが悔しくて、ずっと窓の外ばかり見ていた。
「髪、それどうなってんの」
「え?」
「最近色々してるから」
信号で止まった隙に、天野さんの手が髪に触れる。カールした毛先を指で遊ばれて、緊張で身体が固くなる。
「ふ、複雑そうに見えますけど『くるりんぱ』っていって簡単なヘアアレンジです」
「へぇ。器用だな」
「……変、ですか?」
「いや、そうじゃないけど。これじゃいつもみたいに撫でらんないなって思って」
会社で意地悪な顔をしながら頭を撫で回す天野さんを思い出し、顔を顰めた。