【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜



 結局わたしは、彼と結婚してもコンシェルジュに戻ることはなかった。コンシェルジュに戻りたいというよりも、こんなにもいい環境を与えてもらって申し訳ないくらいだから。

 主婦ではないけど、そのまま家のことに尽力を尽くそうと思った。仕事のことを忘れて。家事に集中しようって。
  
 「聖良、風呂入ってくる」   

 「はい。着替えは、洗面台に置いておきます」

 「ありがとう。助かるよ」

 「……はい」

 彼はわたしの夫。偽りであっても、ウソであっても。戸籍上わたしたちは夫婦。わたしは鷺ノ宮グループの御曹司、鷺ノ宮棗の妻。  

 認められたかなんて分からないけど。それなりに懸命にやっていくつもりだ。結婚して夫婦になったんだから、中途半端なことは出来ない。

 着替えを洗面台に置き、わたしは一旦部屋へ戻った。彼がお風呂を出たら、わたしもお風呂に入ろう。
 
 この家は鷺ノ宮グループの社長、つまり棗さんのお父さんが用意してくれた家だ。とても広くて、迷いそうなくらいの部屋だ。



  
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