【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「所で、棗さん」
「はい」
「もし子供が出来た時に一報をくれたら、出産祝いでも送るよ」
「……はい。ありがとうございます」
「では、これで失礼致します」
「長谷川社長、本日は貴重なお時間頂き、ありがとうございました」
「こちらこそ。ありがとうございました」
子供が出来たら……。そう言ってくれた長谷川社長に、俺は少しだけ罪悪感を感じていた。
……子供。俺たち夫婦の間に、子供は出来るのだろうか。いつかふたりの子供がほしいと、聖良は望んでくれるのだろうか……。
そんなことを思いながら長谷川社長を玄関まで見送ると、俺は社長と共に車に乗りこんだ。
そして車が発進してから間もなく、社長は俺に一言こう言った。
「棗、お前は聖良さんとの子供を望んでいるのか?」
「え?」
「子供だよ。……夫婦にとって子供を望むことは、当たり前のことだと思うが、お前はどうなんだ?」
「……どうって」