【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
お父様が棗さんを社長にして良かったと。息子として誇りに思えるように。わたしにはそれしか出来ることがないから……。
「親父」
「おお、棗。会見ご苦労だった」
「ああ。親父は、大丈夫なのか?」
「なに、何てことない。……それより、お前もあまりムリするなよ。お前は頑張りすぎる所があるからな?」
「分かってる。……手術、頑張れよ」
「言われなくても頑張るさ。お前たちの幸せそうな顔を見ていると、まだ死ねないなと思ったしな?」
「はあ?んだよ、それ……」
棗さんは少し呆れたような表情をしていたけど、心の中ではお父様のことを本当に尊敬していて、大好きだということをわたしは知っているから。そんなふたりのやり取りを見て、微笑ましいなと思っていた。
……なんだかんだ、棗さんはお父様のことを慕っているし、普段はあまり言わないけど……。すごく心配していることを知っているからこそ、お父様には生きていて欲しいな思う。