【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「妊娠しました」その一言が言えたらどれだけ楽なんだろうか……。いつもそんなことばかりを考えてしまう。
「聖良、どうした?顔色があまりよくないようだが……」
「え……?そ、そうですか……?いつも通りですよ?」
なんて自分に言い聞かせるつもりで明るく振る舞う。幸い、そんなにまだつわりがひどい方ではないので、まだ恐らく棗さんには妊娠のことを気付かれてはいないと思うけど……。
「本当に大丈夫か?最近仕事でも、上の空の時があるようだが……?」
「……すみません。明日からまた気を付けます」
棗さんにそんなことを言われてしまっては、ますます言いにくい。妊娠してるから上の空になってしまうなんて、言い訳にしかならない。
「なあ、聖良」
「……はい」
「お前、俺に何か隠し事でもしてるのか?」
棗さんが放ったその一言に、わたしは動揺を隠せなくなった。……隠し事してるといえばそうだ。だって妊娠してることを、まだ言えていない。