【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
その提案をすんなりと受け入れてくれた棗さん。そして棗さんは優しく笑うと、わたしの頭を撫でてから寝室に戻った。
夫婦になって初めて行く、遊園地デート。それがまたどんなデートになるのか、全く想像出来ない。
だけどきっと、初めての思い出にはなるんじゃないかなと思う。
今思えば、結婚する前に一度くらいはデートしておいた方がよかったかもしれないとさえ思っている。
生涯を共にする人がどんな人なのか、何も知らないまま結婚してしまったわたしたちだから。
その距離を少しでも縮められたらいいなと思うけど……。デートなんて初めてで、手は何回も繋いでるし、キスだってしてるけど……。
だけどわたしが棗さんのことを知っているのは、ほんの一欠片くらい。全てを知っている訳ではない。
こんな状態で結婚してしまったことを、少しだけ後悔している。
わたしはそんなことを思いながらバルコニーの花壇の花たちに水をあげていた。そこに着替えたであろう棗さんがリビングへ戻ってきた。