K氏のクリスマス
 そんな噂をされていることなどつゆ知らず、K氏はゆっくり、だが確かな足取りで歩き続ける。角を曲がり犬に吠えられ街を抜け橋を渡り、やがて我が家へたどり着いた。家族の待つ、温かな我が家へ。

 重い玄関ドアを開ける。蝶番がギイっと鳴る。油が切れているようだ。手入れをせねばとK氏は思う。
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