偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

しかしすぐに我に返る。

「あっ……や、やだ。私ったら。すみません……」

窓から離れ、これはそろそろ文句を言われるだろうかと身構えたが、八雲さんはゆっくりと歩いて来て、私と並んで窓を見た。

「本当だ。知らなかったな」

……綺麗。

窓の景色に溶け込む彼の横顔に見惚れた。
やがてその顔は私に向けられ、フッと笑みを落とされる。

「ライトタワーが見えるように設計した覚えはないので、偶然です。……よく見つけましたね」

急に距離感が近くなり、胸がキュンと鳴る。

「や、八雲さんって……」

「一年前、この金森製菓本社ビルを設計した八雲冬哉です。きみはもしかして、社長のお嬢さんの金森凪紗さんですか?」

「え? 私を知っているんですか?」

「いえ。ただ、社長からお嬢さんは『ひどい方向音痴だ』と聞かされていましたから」

やだもう、お父さんったら!
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