偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
しかしその向こうの窓の景色を目の当たりにした私は、意地悪をされたことは一瞬で忘れ、釘付けになる。
「わあ……!」
私が大きな声を出すと、彼は怪訝そうな目を向けて「え?」とつぶやく。
それに応えるように「八雲さん! あちらを見てください!」と興奮気味に窓を指さした。彼もその方向に目をやる。
「窓からちょうどライトタワーが見えますよ! すごい! 綺麗……!」
都内にそびえ立つ電波塔である『ライトタワー』。周囲に高層ビルが並び、今ではタワー全体を見られる場所は限られている。それがここから、ピンポイントで見えていた。
中央エレベーターばかり使っていたから知らなかった事実に、私は仕事中であることも忘れてはしゃいでいた。