偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

「ど、どうするって言ってるの?」

「それが、おじい様がおかしくなってて、商標権も手記も八雲に渡すって言うんだ。〝返してやりたい〟とかなんとか」

おじい様が?

「詳しく話してくれないんだ。凪紗を取り返したくて言ってるのかと思ったが、どうも違う。俺が調べた、八雲の出生に関する資料を見せてからおかしくなった」

それは、冬哉さんがハナさんの孫だと知ったからだろうか。やはりおじい様は『はなごころ』を奪った覚えがあるのかな。

返したいというのは、申し訳ないと思っているということ?

「社長も煮え切らない。渡したら会社が大打撃なのはわかっているみたいだが、凪紗が心配なんだろう。お前を連れ帰れば、社長はなんとかなりそうだ。問題はおじい様。俺は絶対に、『はなごころ』を誰かにやる気はない!」

アキトくんは、次期社長としての立場があるからそこは曲げられないのだろう。それをこの場で否定することは私にはできず、「おじい様に聞いてみようね」とうなずいた。
< 192 / 211 >

この作品をシェア

pagetop