偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

「まったく。あんな小僧に本社の設計を任せたと知ったときは驚いたわい。おまけに別荘まで」

引き続き冬哉さんの悪口ばかりを並べるおじい様に、私のモヤモヤは積もっていく。

父だって知り合いの社長さんから凄腕の建築士がいると紹介され、建築例に感銘を受けて冬哉さんと契約したはずなのに、おじい様の前では「まあ、若いは若いですけどね……」と曖昧な態度ばかり取っている。

「おじい様」

ついに我慢ならず、おじい様の隣に腰を下ろした。

「どうした、凪紗」

「本社も別荘も、私はとても気に入っていますよ。どうしてそんなに悪く言うんです?」

「どうしてもだ。生意気な目つきをしておる。八雲という名前も気に食わんし、大工というのも気に食わん」

ひどい。だいたい正しくは大工さんではなく建築士さんだし、詳しく知りもしないのに否定しているなんてますます納得できない。
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