偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
喧騒が聞こえなくなるほどの胸騒ぎに支配されたそのとき、ハンドバッグのポケットに入っていたスマホが「ピリリ」と音を立てた。
正気に戻り、画面を確認する。
「えっ……!?」
映し出されていた『八雲冬哉』の文字を見て、頭の中のモヤが吹き飛ばされる。もうあちらから連絡は来ないと思っていた。
しかし、悪いことを宣告される予感も拭えない。
騒がしい薬局から離れ、隣の不動産屋の前に立ち。震えの止まらない指でどうにか通話をタップする。
「……は、はい」
怖くて、耳から数ミリ離した。
『凪紗? 久しぶり。急に電話して悪いな』
声を聞いただけで、涙が滲み、口もとを手のひらで押さえる。