偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「と、冬哉さん……」
『ごめん、いきなり。どうしても声が聞きたくなってさ』
嘘みたい。幸せが涙となってこぼれ落ちる。
よかった。冬哉さんも、ちゃんと私を想ってくれている。一か月も声を聞けずに寂しかったのは、私だけじゃなかったんだ。
『あれから一か月以上経ったけど。どうだった?』
喜びはスンと落ち着き、また胸騒ぎに戻る。
本当の用件はこっちなのだろうか。私の心は激しい波のように上下し、冬哉さんの紡ぐ言葉ひとつに揺り動かされる。
歩道のすぐ向こうを車が行き交い、風を切る不快な音が、返事を急かしている。
『凪紗? どうした?』
事実を告げようとする唇が震え、気づけば、
「……はい。妊娠、しました」
そうつぶやいていた。
『本当?』
一瞬、嘘ではないと思い、スマホを耳に当てたままうなずく。
しかし、今は事実ではなくただの展望で、つまり咄嗟に嘘をついてしまったのだ、と口にしてから自覚した。