偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
すぐに家に電話を入れた後、周囲を気にしながら歩道をさらに進んで数分。
冬哉さんのものと思しき車が背後から速度を落とし、私の数メートル前で道路脇に停車した。
ナンバーを確認し、間違いないと思い駆け寄る。助手席の窓が開き、「凪紗、乗って」と声がした。
「冬哉さん!」
ドアを開けて助手席に滑り込み、運転席にいるいつものスーツ姿の彼を見て感極まる。
「シートベルト」
「は、はい」
感動の抱擁をすることなく、車はウインカーを消して発進した。
「家に連絡した?」
興奮冷めやらぬまま、彼との業務連絡が続く。
「はい。父と母に冬哉さんが来ると話して、おじい様も呼ぶと言っていました。父はすごく喜んでいて……ふふ、私たちの仲が戻ったって、勘づいているみたいで」
笑顔で話す私だが、冬哉さんは不自然に無視をした。運転中だからかな、と、彼へ向けた顔をフロントガラスへと戻し、ときどき横目で表情を確認する。