偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

「凪紗。ひとついい?」

「は、はいっ」

ウインカーの音とともに車内に響いた冬哉さんの声に、私の体は強張った。彼の話の切り出し方は、一種のトラウマになっている。

「俺のこと、好き?」

赤信号で止まり、彼は私を見た。いつ聞いても私の答えは変わらないのに、最近の冬哉さんは、何度かその質問をしてくる。
当たり前だ、とばかりに思いきり首を縦に振る。

「はいっ! 好きです」

彼もうなずき、私の頭に手を伸ばした。髪に沿って優しくなでられ、久しぶりのスキンシップに頬が熱くなる。

「なら、これから俺がどんなことをしても、なにが起こっても、その気持ちを忘れないで。俺を信じて、ついて来ると約束して」

頭を撫でる指先に、グッと力を込められた気がした。

どういう意味だろう、と疑問に思ったが、私の気持ちが消えることはないし、冬哉さんについて行く覚悟はとっくにできている。自信を持って、大きくうなずいた。
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