偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
コードレスのマウスをいじり、画面を切り替えた彼は、なにかのシステムを起動している。音量を調節する仕草を見せたかと思うと、静がだった画面から「ガサッ」と音がし、見覚えのある人物が映った。
『よ、冬哉。おかえりー』
本村さんだ。何度か画面が揺れた後でピントが合い、ジャケットの胸から上が映っている。ビデオ通話のようだ。
「本村。そっちは問題ないか」
『問題ないよ。クライアントのアポも俺たちでやれてるし、トラブルもない。冬哉のお客さんも、スケジュール調整した通り。ああ、さっき金森社長からオフィスに電話が来たよ。冬哉は一週間休暇を取ってると答えておいたけど』
「ああ。それでいい」
『で? 金森家の方はどう?』
〝金森家〟。その単語と、いつも私と話してくれるときとは雰囲気の違う意地悪げな本村さんに、嫌な予感がする。本村さんも関係しているのだろうか。
『……って、あれ? 後ろに凪紗さんいない? うおお、やっぱり! ヤッホー! 凪紗さーん』
画面の向こうで手を振っている。私はロボットのように、真顔でゆらゆらと手を振り返す。