偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

家庭が傾いたと同時に中学生になった俺は、学校で少々不当な扱いを受けていた。

誰がどう見ても貧乏な身なりをしていたため、そこから派生して俺に親がいないことを揶揄(やゆ)する奴らが現れた。

一度そいつらに手を出して、学校に祖母が呼び出されたことがある。腰を折って謝るあの姿は二度と見たくないと思い、同級生との関わりを避けるようになった。

上から目線で手を差し伸べようとする者も徹底的に拒んだ。ここは祖父の血を引いていると思う。

時折、『私と仲良くしようよ』と言い出す女子が現れることにも、吐き気がした。
救ってやるから好きに扱わせてくれ、とでも言いたげな、下心のある視線がすこぶる不快で、この頃から女も大嫌いだった。利用こそすれ、大事にするという発想はなかった。

ひとりでいい。最初から、誰にもなにも期待していない。
失ったら困るようなものはなにも欲しくないし、そういうものを持つことは、生き抜く上で損にしかならないことを祖母を見て知っている。
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