政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 それさえ知らなかったのだと自分に呆れながら尋ねると、肉料理の付け合わせを口に運んでいた秋瀬くんの手が止まった。

「なにって、デザイナー?」

「そうじゃなくて。どこで、とか」

「どこだと思う?」

 面白がるように聞かれて少しむっとする。そうやってからかうのはよくない。

「教えてくれたらいいのに」

「ちょっとうれしくて」

「なにが?」

「やっと俺のことを聞いてくれたなーと思った」

 どき、と胸が騒いだのは、秋瀬くんの顔から笑みが消えたからだった。

「少しは夫婦っぽくなれたのかもな、俺たち」

「……なりたかったの?」

 童顔の秋瀬くんが真面目な顔をすると、年相応に大人びて見える。慣れた相手のあまり見ない姿は、私をひどく緊張させた。

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