政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 父も秋瀬くんも、そして美春さんもうちの母も、誰も泰時さんを気にかけていない。威厳たっぷりに見えるこの人は、どうもそういう扱いらしい。怒りで肩を震わせているのに誰も触れず、みんなは和気あいあいと話をしている。

 とりあえず、秋瀬くんは本当にスパイではなかった。そして私をちゃんと好きでいてくれた。それがわかっただけよしとする。

「両家の顔合わせもないままだと思ってたから、スパイさんにはお礼を言わなきゃね」

「ごめんね、うちの泰時がめんどくさくて」

 母親同士がのんびり話し、その横で泰時さんが秋瀬くんにがみがみと「正親のこういうところがだめ」という話をしている。それに対し父は「でも学生時代に泰時が……」と余計な茶々を入れて笑っていた。

 改めて、信じられない状況だと思った。

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