政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 あ、と砂に靴を取られて転びそうになる。すぐに振り返った秋瀬くんが抱き留めてくれた。

「ありがと」

「どういたしまして」

 波の音が私たちの間を抜けていく。しばらく見つめ合ったあと、ふたり同時に顔を寄せた。考えていることは同じだったようだ。

 外の空気で少し冷えた唇が重なる。ベッドの上で与えられる口付けより甘さは控えめだったけれど、今の私にはこれだけでも充分だった。

「秋瀬くんと離婚するような話にならなくてよかったよ」

「親同士が知り合いで、お互いを理解してなかったら危なかったかもな」

「……ほんとによかった」

 秋瀬くんにぎゅう、と抱き着く。この人だけはありえないと思っていたのに、今はこの腕の中以上に落ち着ける場所を知らない。

「しろちゃんは俺が好きだもんな」

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