政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 やがて、苦笑まじりの声が通話口から聞こえる。

『ごめんな。寂しい思いさせて』

 秋瀬くんに見えているはずもないのに、その場で首を振る。

「ううん。でも早く帰ってきてほしい……」

『新幹線の中で走るか』

「そんなことしても到着時間は変わらないよ」

 いつも通りだからこそ、秋瀬くんへのいろんな思いが込み上げて止まらない。

「どうしよう。私、秋瀬くんのことがすごく好きみたい。早く会いたいよ」

『なんで俺が側にいないときに限ってデレるんだ。そういうのは普段から言ってくれよ』

「ご、ごめん」

『いいよ。帰ってから改めて聞かせてもらう』

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