政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
「そっちは本気でしないつもりだった?」

 またこの男は。すぐそうやって煽る。

「当たり前――っん」

 不意打ちのように首筋へ触れた手が、あまり秋瀬くんには聞かせたくない声を、私の喉から引き出した。

「触らないでよ。変態、バカ、嫌い」

「そんなに嫌わなくてもいいだろ」

 変な声を聞かれて気まずくなった私の暴言も、秋瀬くんはさらっと笑って流してしまう。

「俺たち、今日から夫婦なのにさ」

 そう、それが一番の問題なのだ。

 天地がひっくり返ってもありえなかったのに、よりによってなぜ私の夫が秋瀬くんになってしまったのか。

 ぐぬぬ、と唇を噛んだ私の耳に顔を寄せると、秋瀬くんは憎たらしいぐらい心地のいい低音で囁いた。

「これからは家でもかわいがってやるから、覚悟しておけよ」


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