政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
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「よし。じゃあ今回は和泉のデザインでいくか」
二時間にも及ぶ会議の末、デザイン会社『イリス』に所属する葉鳥チームのリーダー、葉鳥さんが言う。
その声が会議室に集められた七人の耳に浸透しきる前に、私は大きくガッツポーズしていた。
「ありがとうございます、頑張ります!」
勢い込んで言ったはいいものの。
「あ、悪い。和泉は和泉でも、真白(ましろ)じゃなくて秋瀬の方だ」
困った顔の葉鳥さんが、私から向かいの席の秋瀬くんへと視線をずらす。つられるように私もそちらを見てしまい、後悔した。
「ごめんなー、しろちゃん。また俺の勝ちみたい」
「またって言わないで」
反射的に返し、チームのみんながどっと笑う。
「いや、もうこのやり取りがないと会議やった気がしないよね」