政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
「食べる前に言うなって」

 苦笑しながら、秋瀬くんが手を合わせた。

 ふたり揃っていつも一緒に「いただきます」を言う。これも気づけばお決まりになっていた。こんな瞬間に、この人との関係が同僚ではなく夫婦なのだと感じる。

 ふう、と息で冷ましてからラーメンをすすり、空腹の胃に落とす。シャキシャキの野菜が塩っ気の強いスープに絡んで、口に運ぶのが止まらなくなった。

 もやしを多めにした、と言うだけあって、なかなか野菜が減らない。それでも半分ほど消化したところで、今日母にされた話を始めた。

「あのね、秋瀬くん」

「うん」

「お母さんから、子どもはまだかって聞かれて」

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