政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 そうだっただろうかと、いまいち微妙な夫婦生活を思い出す。

 初めて秋瀬くんが夕食を作ってくれたのは、遅くまで残業があった日だ。へとへとになって帰宅した私を、ふんわりとだしの香りが出迎えてくれた。ひとり暮らしの頃だったらそのまま適当にシャワーを済ませて眠っていたけれど、夕飯を作ってくれたのなら食べなければならない。ご飯を作ってもらえるなら、夫婦生活も悪くはないのかもしれないと思いながら食べた親子丼は、たしかにとてもおいしかった記憶がある。

「喜んでくれたから、これからも俺が飯担当のときは親子丼だけ」

「一周回って嫌がらせだよ、秋瀬くん」

 つんけんした言い方をして背を向けたのは、秋瀬くんが優しい声色で言ったせい。

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