政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 ああ、と心の中で嘆息する。さっきから秋瀬くんのちょっとした発言で喜びすぎている。向こうはキスをなかったことにするような男なのに。

 そんな人でも、彼は私の夫だ。同僚とほぼ変わらない扱いだとしても。



 それからというもの、私も秋瀬くんもしばらく忙しい日々が続いた。お互い受けていた案件でそれぞれトラブルが発生し、その対応でてんやわんやしていたせいだ。

 家に帰ってからもほとんど会話もせず眠るだけで、食事さえともにしない毎日が続き、ただでさえ夫婦らしくなかった関係が加速した。

 ようやく一段落ついた頃には、もうひと月近くが過ぎていた。

 そうなるとあの軽妙なからかいや、馴れ馴れしく撫で回してくる手を少し恋しく思ってしまうから困る。

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