俺様社長はハツコイ妻を溺愛したい
空になったお皿を洗っていると、リビングの扉が開く。

「ちょっと、何その格好!? なんでお風呂入ってないの!」

顔を覗かせたのは半裸の蒼泉だ。

筋肉質の体が見えてしまって、咄嗟に手で顔を隠す。

「あ、悪い。 言い忘れたことがあった」

「何よ! 早く言って」

お願いだから、私の真っ赤な顔に気が付かないうちに用件を!

「クリスマスイブ、休みがとれた。 空けとけ」

「は? イブ? 分かった分かった――ん!? え、どうして…!」

適当にあしらってから気がつく。
クリスマスイブに休みをとった―――!?
なんてタイムリーな……

「どうしてって……言っただろ。クリスマスは、俺と過ごそうと。 二十五日は休めなかったから、イブで悪いが」

確かにそんなことを言っていたような……?

「デートだ。 初デート」

「デ、デート…!?」

思わず隔てていた手の壁を離してしまい、また彼の上半身を見てしまった。

クリスマスイブに初デート――
響きとか、すっごい恋人感満載じゃない?

「そう、デート。お前も休みにしといた」

「えぇ、私も……!?」

「なんでそんなに驚くんだ。当たり前だろ、デートなんだから」

あ、あぁ、そっか。そうよね。

ていうか、その格好でデート連発しないで!

「わ、わわ分かった! もう分かったから、早くお風呂、入ってきて!」

私はさっと体を反転させる。

「……いずれ真っ裸も見るんだから、半裸くらいでぎゃーぎゃー騒ぐな」

な!?
いずれ真っ裸も見るんだから……? あいつめ。
見るもんですか!
蒼泉の全裸なんか、一生見てやらないわ!

もう。デートって聞いて、ちょっと楽しそう………なんて思っちゃった私、ばかね。

あんなやつとのデートなんかどうってことないわ。

デート中、一言も喋らないでいてやるんだから!
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