終わらない夢
翌朝、翔を待っていた。
訳ではない。翔は、私の隣にいる。私の隣で寝ている。昨日、そのまま泊まることになった。隣で誰かが寝ているのなんて、修学旅行以来かな。
そっと髪に触れる。優しい、ふんわりした髪。それなのに髪自体は特にクセもなく、綺麗にまとまってるのがかなりムカつく。どうしたらそんな綺麗になるの?
「……」
こう寝顔を見ていると、かわいい弟だと思えてしまう。
「ん……」
「おはよう。ねぼすけ」
「ゆ…うな…?」
半目の状態で私の方を見る。
「まだ寝るのか、こいつめ」
「んー……」
うつらうつらと、手だけ軽く掴まれた。夢の中で、いったい何をしているんだろう。
と思っていた矢先、いきなり引っ張られ、翔の腕の中に収まった。
「ちょ、翔…?」
「ずっと……いっしょ…に」
ええと…。本当に夢の中で何してるの?
とにかく、早めに抜けないと。起きた時に大惨事になりかねない。
「あれ…何でこんなに力強いの」
ぎゅっと抱きしめられて、その……まったく離れない。
「うーん……」


「すまない。…本当に、すまない」
「いいよ、気にしてないし」
あのあと、翔が目を開けて顔を真っ赤にしながら「ごめん!!」と言ってきた。それからずっとこの状態。
「大丈夫だって。何もされなかったしさ」
「でも…ひょっとして、変な所、触ったり、とか、その、えっと」
またしどろもどろし始めた。どうやら女の子の体に慣れてないらしい。触られたくらいで壊れるわけでもないのに。
「大丈夫だってば。らしくないね」
「イヤ…だったよな」
そう言われたとき、いつもみたいに言葉を返せなかった。
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