終わらない夢
翔は必死に私を説得しようとする。
「すまない…俺は優奈が調べていたことは知ってた。黙っててすまない。優奈の努力を無駄にしたくはなかったんだ。ああ、優奈と会う前から知っていた。だから、引っ越してきた時に真っ先にコンタクトを取った。そこで瞳が紺色だと知って、なんとか俺が守ろうと決めた。これ以上犠牲は増やしたくなかった」
かなりの早口で、正直あまり何を言っているか分からなかった。でも、翔が私のことをずっと守ろうとしてくれていたことは分かった。それだけでも、心強い。
「大丈夫だ。俺が守る。絶対、俺が守る」
私の目を見てまっすぐに言ってくれる。この子、本当に私より歳下なのかな。歳上のお兄さんみたい。
「その…ずっと、守る」
「え?」
「なんでもない!か、帰るぞ。家まで送ろう」
「……」

「おかえり優奈。おお、翔くんか!わざわざありがとうな」
「いえ…今日は、から揚げですか?」
「おっ、分かるか!どうだ、食べていくか?」
「へ?い、いいん…です、か?」
「おお!たっぷり作ってるからな!」
忘れていた。父はお客さんが大好きなんだ。家にすぐ人を招くし、すぐ振る舞いたがる。
「よーし、今日は肉も焼くぞ!」
「肉っ!!」
「ははは…」
やっぱり、子どもっぽいところが残ってる。安心した。翔は、まだまだ子どもだよ。

「おいしー!!おじさん、これ美味しい!」
「はっはっは、そうだろ?どんどん食え〜!」
「お父さん……」
パーティでも開催してるのかと思うくらい賑やかだ。でも、心の隅では恐怖が渦巻いている。
雪は『会って話したい』と言っていた。つまり、しばらくの猶予はある。でも、長くはない。なるべく早くケリをつけなくては。
「はっ…俺、ガキみたいにはしゃいで…」
「ガキでいいんだよ。特に男は、バカみたいにはしゃいで、たくさん食ってたくさん寝るんだ。そうしないと強くなれないからな!」
「…はいっ」
平和な食卓。いつまで見れるのかな。
「ゆうな、ぜんぜん食べてないぞ」
「食べながら話さないの。行儀が悪い子は嫌われるよ?」
「はーいっ」
「ははは!優奈も立派にお姉さんだな!」
「だって、翔がっ…」
…急に、涙が溢れてきた。
「ゆ、優奈?どうした?」
「ご、ごめんっ。本当になんでもない」
何だろう。この嫌な予感は。胸のざわめきは。
何もないと思ってるのに、体で感じてしまう。

私は、もうここに居られないかもしれない。
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