今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
第一章 猫かぶりな上司は実は狼でした

 猫かぶりなんて言葉があるけれど、彼は間違いなく相当な猫かぶりだ。
 それが猫どころか狼の毛皮まで被っているなんて、一体誰が想像しただろうか?


◆◆    1


 水曜日の昼下がり、午後一時半を過ぎると社員食堂の人もまばらだ。

 入口に置かれた水色のトレーを取って、カフェテリア形式のカウンターで何を食べようかと吟味する。若鶏のトマト煮とどっちを取るか散々迷って、結局はカルボナーラをチョイスした。

 支払いを終えて食事をするテーブル席へと目を向ける。
 ひとりの女性が片手を振ってアピールしているのが見えた。

「こっち、こっち」

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