今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

 そんなこんなで、今日は朝からまともに相澤の顔を見られずにいる。

「あ、相澤係長と高塔副課長だ」

 お昼休み。いつものように一緒に食事していた若菜が陽茉莉の後方を見て呟く。
 陽茉莉は『相澤』という単語に動揺して、思わず箸で掴んでいたポークソテーをぼとりと皿の上に落とした。

「最近、ふたりでいるのをよく見かけるよね。うちの職場の女性社員もキャーキャー言ってた。イケメン二人組で、眼福だって」

 若菜は陽茉莉の肩越しに遠くを眺めながら、楽しげだ。なんでも、ここ一ヶ月ほど相澤と高塔が一緒に昼食を取っている姿が頻繁に目撃されているらしい。

「あのふたりって、昔からの知り合いみたいだもんね。どういう関係なんだろう?」
「昔から? そうなの?」

 陽茉莉は初めて聞く事実に、若菜に聞き返す。
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