今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
 二度目ともなると、この猫が剥げた様子にも慣れた。

「社内チャット使って『ふたりきりで会いたい』だなんて送ってくるから楽しみにしてきたのに、つれないねぇ」

 高塔は陽茉莉のにべもない態度に、苦笑する。

「週末に八幡神社でお会いした際に聞いた件で、聞きたいことがあったんです」
「まあ、そんな気はしてた」

 高塔はようやく注文するメニューを決めたのか、店員を呼び出すボタンを押す。
 すぐに注文を伺いに来た店員に、高塔は「天ぷらそば」と注文していた。陽茉莉は日替わりランチセットを注文する。狐のあやかしなのにきつねそばじゃないんだなと、どうでもいいことを思った。

「あのとき、祓除師には訓練すれば私もなれるって言っていましたよね? 祓除札を作ったり、癒札を作ることができるって」
「言ったねえ」
「あれ、私も訓練したいです」

 陽茉莉は意を決して、高塔にそう告げた。
< 182 / 296 >

この作品をシェア

pagetop