今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

 祓除札は邪鬼を祓うためのお札、癒札はあやかしの妖力を回復させることができる札だ。
 高塔は柔和な表情から笑みを消すと、探るような目付きで陽茉莉を見つめる。そのまっすぐな眼差しに居心地の悪さを感じたが、自分を奮い立たせてしっかりと見返す。陽茉莉は緊張して、こくりとつばを飲み込んだ。

「失礼しますー」と明るいかけ声と共に個室のドアががらりと開く。
「天ぷらそばと、日替わりランチをお持ちしました」

 食事が目の前に置かれる。だし汁のいい匂いが鼻孔を掠めた。
 店員が退室すると、高塔ははあっと息を吐く。

「やめたほうがいいと思うよ。祓除師になるっていうことは、邪鬼がいるところに自ら赴くってことだ。今のように礼也の元で守られていれば遭遇しなかったような危険に遇う可能性がある」
「でも、神力が強い人間が少なくて困っているんですよね?」
「それはそうなんだけど、新山ちゃんがこっちの世界に足を踏み込むことに礼也は反対すると思うんだ。ほらっ、琴子さんのこともあるから……」

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