今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
できることなら、陽茉莉を自分の作った安全な場所に置いて、危険など知らずに過ごさせたい。
この歳になってこんなことを言うのは笑われてしまいそうな程くさい話だが、陽茉莉のことは初恋だった。
『わんちゃん、大丈夫?』
幼い日、妖力を使い果たした挙げ句に傷ついて動けなくなった自分を心配そうに見つめた優しい瞳。
『早く元気になるんだよー』
そう言って抱き上げるとにこりと微笑んだ可愛い女の子。
それが陽茉莉だった。
もう一度会いたくて家の近くに行ったとき、陽茉莉は既にそこには住んでいなかった。
再会後に、あの家のすぐ近くに転居しただけだと知ったが、そんなことを知らなかった 相澤は、二度とあの子には会えないのだと思っていた。