今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
 そう思うと、いてもたってもいられなかった。

 まず、すぐにアレーズコーポレーションの中途採用試験を受けた。超一流商社から中堅の総合リラクゼーション会社への転職。誰の目に見ても奇妙な転職で、周り──特に前の勤務先の関係者からは随分と止められたが、後悔はなかった。

 社内の遠い距離から彼女を見守り、異動のタイミングで多少無理を言って陽茉莉を自分の部下に引き抜いた。

 ──それなのに。

 今日、陽茉莉は相澤に一言も告げずに高塔に会いに行った。
 と言うことは、陽茉莉自身は自分から自立することを望んでいるのかもしれない。


 相澤はカーテンの隙間から、煌々と光る丸い月を恨めしげに見上げる。
 満月の夜は、あやかしの性質──狼の血が強くなる。欲望に忠実になり、抑えが利きにくくなるのだ。
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