今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

 にこりと微笑まれて、胸の奥底から嬉しさが込み上げるのを感じた。これは多分、猫かぶりじゃない本当の笑顔で、心から〝ありがとう〟って言ってくれている。

「いえ。だって、私達の仕事はチーム戦じゃないですか」

 いつだか、相澤が陽茉莉に言った言葉を返す。相澤は一瞬意表を突かれたような顔をしたが、すぐに口の端を上げた。

「いやー、とにかくみんな頑張ってくれた。祝杯を上げに行かないとだな」

 須山課長がご機嫌に手を叩き、ちょうど横に座っていた楠木さんに「セッティングよろしく」とお願いした。楠木さんが「なんで私が?」と言いたげに眉根を寄せるのが視界の端に映る。

「ふふっ」

 思わず、笑みが漏れる。

(相澤係長の下で働く営業第一、結構いいかも)

 心からそう感じた瞬間だった。
 
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