今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
男性が陽茉莉へと手を差し出す。その手が首元へ伸びてきたとき、陽茉莉はヒュッと息を呑んだ。
手はとても冷たかった。
寒い中を外にいただけが原因とは思えないほどに冷えた、氷のように生気のない感触。
ぞくりと寒気がして、急激に肩の辺りが重くなるのを感じた。
(──これ)
この感覚を知っている。
忘れたくても、忘れられるはずがない。あれは、相澤に恋人がいると聞いてなぜかむしゃくしゃして、やけ酒下挙げ句に邪鬼に襲われたときだった。
「嫌っ!」
陽茉莉は咄嗟にその手を振り払い。後ろに後ずさった。
踵を返して走って逃げようとすると、右の足首を何かにぐっと掴まれるようか感覚がして陽茉莉は前に倒れる。