今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

(何?)

 振り返って、見るのではなかったと後悔した。
 青白い手が、自分の足首を掴んでいる。体はなく、手しかなかったのだ。

 慌てて祓除札をショルダーバッグから取り出し、その手に投げつける。命中したそれはパチンと弾け、足首を掴まれている感覚が消えた。

「随分と物騒なものを持っていますね」

 男性が悠然した様子で微笑み、こちらに近付いてくる。

 背筋に冷たいものが流れ落ちるのを感じた。
 この男の人──恐らく邪鬼の一種だ──は、自分はこんなものでは倒せないという絶対的な自信を持っているのだ。

 そして、さっきのおかしな手も、きっとこの人の仕業で──。
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