今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

「こうやってゆっくり飲んだのも久しぶりだよな」
「そうだな」

 相澤は高塔に注いでもらった後、今度は瓶子を受け取って高塔のグラスへと酒を注ぐ。

 陽茉莉と暮らし始めてからというもの、遅くなろうとも極力夕食は家で食べてきた。こうして高塔とふたりで酒を酌み交わしたのは三ヶ月ぶり近いかもしれない。

「しかしさ。俺、あの日ほど自分ができる男だと思ったことないわ」
「できる男?」

 相澤が怪訝な表情で高塔を見返す。

「あの、強力な邪気が現れた日だよ。新山ちゃんが駆けつけた。一番いい見せ場を礼也にあげて、自分は裏方で後処理に回るって、完璧じゃない? 昔から、お姫様のピンチに現れるのはヒーローだって決まってる」

 器用にウインクした高塔を、相澤が胡乱げに見つめた。
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