今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
陽茉莉はそう付け加えた。相澤の負担になりたくないという気持ちにも、うそはないのだ。
「は?」
「ほら、礼也さんだって、好きな人ができることもあるでしょうし。遅くなる日は言ってくだされば、悠翔君も預かれますから。本当に、礼也さんには感謝してもしきれないです」
「…………。陽茉莉は妙なところで鈍いが、ここまでだとは思っていなかった」
相澤が額に手を当てて顔を覆う。そして、その手が下りたとき、相澤はどこか黒い笑みを浮かべて陽茉莉を見つめていた。
「なあ、陽茉莉。俺は自分が間違っていたことに気付いたよ。だから、これからは遠慮なしにいこうと思う」
「……行くって、どこに?」
「陽茉莉。本気でそれ、言ってるの?」
握られたままの手をぐいっと引き寄せられ、いつの間にかソファーに座ったままの状態で相澤に囲い込まれていた。
「男が何の下心もなしに女を自宅に住まわせるなんて、あり得ると思う?」