運命の一夜を越えて
「落ち着け。大丈夫。ゆっくり息しろ。大丈夫。」
私は全身の力を抜きながら渉の声と、背中をさすってくれる手に集中をする。


渉は私が落ち着くと、少し体を離して私の顔を覗き込んだ。
「話してくれてありがとう」

私のタイミングを待っていてくれたのだろう。
渉は、私の背中をさする手を止めないまま、心配そうな顔をしながら、なだめるような微笑みを浮かべていた。

「いくつか聞いてもいいかな」
・・・。言葉にしないまま私は頷く。

「ありがとう」
私の言葉に、まだ頬に残っていた涙のあとを指でなぞりながら、渉は話始めた。

「今、体の調子の悪いところはある?」
首を横に振る私。
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