運命の一夜を越えて
私ががんを克服して日常生活を当たり前に送れるようになったころ、父のがんが発覚した。

私は今でも・・・

私の体にできたがんを、父が引き受けてくれたように思っている・・・。


自分と同じようにがんと闘うことになった父の姿を見ながら、私はいつだって罪悪感を感じていた。私のがんが父に飛んで行ってしまったような気がしていた・・・。

痛いの痛いの飛んでけというおなじないの言葉が心の中でぐるぐるとまわり、今でも・・・亡くなった父を思い出すと心がずきずきと痛みだす。

『彩?』
「ん?ごめん」
『お母さんこそ疲れているのに、ごめんね。お正月帰ってくるの楽しみにしてるから』
「うん。おばあちゃんにもよろしくね。」
『わかった』
実家には母と、父の母、つまり私の祖母が一緒に暮らしていた。
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