運命の一夜を越えて
私は一度電話を切られたことによって、はじめよりも少し冷静になりながら画面をスライドさせた。

「もしもし」
『ごめん。もしもし。』
「今タイミング悪ければ後ででも」
『あー、違う。』
明らかに声がおかしい。

あの日一日限りでもしかして今は女性と一緒にいるとか?
私のことなんて覚えていないくらい、合コン三昧で忙しかったとか?

いろいろな憶測が飛び交い、若干苛立ってしまう私。

いい加減な男だ。
少しくらい顔とかスタイルがいいからっていい気になってんじゃないの?

憶測から勝手なイメージができて、勝手に苛立つ私。
「お忙しいようなので手短に。先日お借りしたマフラーを借りたまま年を越すのも嫌なのでお返ししたいのですが、どうしたらいいですか?そちらさえよければ郵送でも」
そこまで早口で告げると、瀬川渉は私の言葉を慌てたように遮ってきた。
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