運命の一夜を越えて
誰にも祝福の言葉はもらえないと思っていた私は、顔を覆って涙を流した。

初めて誰かに祝福してもらえた命。
すぐにでも本当は祝福される命なのに。遅くなってごめんねとお腹の赤ちゃんに語り掛ける。

ママの声、届いてる・・・?


「大切に育てましょうね。」
「はい」
「パパ、ママのサポート頑張りましょうね」
「はい」
背筋を伸ばして渉が返事をする。

その声にも表情にも、もう迷いは消えていた。

渉は決めたんだ。
もう、前を向いてる。

私もしっかりしないとと、言い聞かせながら私たちは先生からもらったエコー写真をしばらく病室に戻ってからも見つめた。
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