運命の一夜を越えて
「現在、がんがリンパ節にも転移しています。妊娠の継続を希望するということは抗がん剤による積極的な治療はできません。」
「はい」
「痛みが出て来たとしても、使用できる薬も限られてきます。」
「はい」
「瀬川さん、これから私は厳しいことを言います。」
渡部先生の話は幸せな余韻を一気に覚ますような内容だった。

私の隣に座り、渉は私の手を握ってくれている。

「お子さんが生まれるまで、命が続く保証はできません」
「・・・はい」
返事をできない渉にかわり私が返事をする。
「出産までにかなり彩さんは痛みや倦怠感、もしかしたら意識がある状態での出産もできない可能性もあります。つらい妊娠生活になる可能性が高い。」
「はい」
「頑張りだけではやり過ごせないかもしれませんし、妊娠の継続が難しい時はすぐにでも帝王切開をして出産していただくかもしれません。」
「はい」
「ご主人のフォローもかなり必要です。必要であれば奥様は入院生活をおくるようになるかもしれません。」
「はい」
先生の言葉に渉が返事をする。
もう迷わないと決めている渉の決意がここでもちゃんと伝わる。
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