運命の一夜を越えて
話ながら渉の方を見ると、すべての想いを察したように力強く頷いてくれた。

「わかりました。」
「よろしくお願いします。」
「瀬川さん」
「はい」
先生は少し黙ってから、ものすごく穏やかに微笑んだ。

「よかったね」
「え?」
意外な言葉に思考が停止する。

「ずっと望んでた命だもんね。」

先生は、私が婦人科の検査結果を聞いた後の絶望している姿を知っている。

そんな先生だからこその言葉。

「ありがとうございます」
私は先生の複雑な気持ちのままの祝福に心から感謝をして頭を下げた。
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