運命の一夜を越えて
「先生」
私の言葉に先生が視線を向ける。
同じように渉も。

「私は赤ちゃんを無事に産むまで、治療はしません。痛みも苦痛も耐えます。赤ちゃんに危険な可能性があることは一切やりたくありません。」
「彩」
「状況によっては、私のせいで赤ちゃんが危険な状態になれば、先生のおっしゃる通りに早くこの世に産みだすこともあるかもしれません。でも、赤ちゃんの準備ができるまで私は耐えたい。待ちたい。」
「・・・」

もしかしたら赤ちゃんが生まれても私はこの子に会えないかもしれないということはすでに覚悟をしている私。
生まれてからだってしてあげたいことがたくさんある。

私に奇跡をくれたこの子に、してあげたいことがたっくさんある。

でもそれができないかもしれないとわかっているからこそ、生きているうちにできることを精一杯やりたい。
< 359 / 498 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop