運命の一夜を越えて
家のカギを開けて中に入るとお義母さんが寝室で荷造りをしてくれている最中だった。

その背中が震えている。
俺の気配に気づいて、お義母さんは背を向けたまま涙を拭って泣いていることを隠そうとしている。


「すみません…お義母さん」
背中からかけた俺の言葉にお義母さんは勤めて明るく返事を返してくる。
でも、俺の方を見れないのはきっと泣き顔だからだ。
「何言ってるのよ。私の方こそごめんなさいね。娘のせいで渉君には負担ばっかりかけて。」
「いえ・・・俺の責任です・・・彩の命を危険にさらしているのは・・・俺のせいです。お義母さんには謝っても謝り切れません。本当に・・・すみません。」

ずっとずっとお義母さんに言えなかった言葉を俺はお義母さんに伝えた。
その背中に頭を下げる。

「彩と決めていたんです。子供を生むと決めたからにはもう謝るのはやめようと。俺たちの決断できっと迷惑や負担をかけてしまうことは覚悟していました。でも、力をかしてくれる人に、心配をかけてしまう人に、謝るのはやめようって・・・。でも・・・。」
思わず言葉に詰まりそうになる。
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