料理男子、恋をする

花見


誘われた花見の当日、佳亮は手に弁当と菓子折りを持って大瀧家を訪ねた。あの延々と続く白い壁を見ながら屋敷の正面に回り込むという行為だけで、精神的に疲れてしまった。

インタフォンを鳴らすと男の声で応答があり、門が開いた。さらに、以前佐々木が運転してくれた道を歩いて玄関まで来る。すると玄関から白樺が迎えに出てくれた。

「ようこそおいでくださいました、杉山さま」

「お邪魔します、白樺さん」

挨拶をすると、屋敷の中へと案内される。赤の絨毯が延べられた廊下は以前薫子の部屋を訪れた方とは逆に、階段の脇を通って右に折れた。

四つ目の部屋のドアの前で白樺が立ち止まり、扉をノックした。

「杉山さまがおいでです」

白樺の品の良い声でドアが開くと、其処には薫子が居た。

「いらっしゃい、佳亮くん。どうぞ入って」

薫子は今日もパンツ姿に身を包み、それだけで安心できる。ここで以前のようなワンピース姿で出迎えられたら、佳亮は早くも緊張を強いられるところだった。

「お邪魔します」

佳亮はそう言って招かれた部屋の中に入った。当たり前だが部屋の中も広い。応接間とサンルームを合わせたような作りになっており、白を基調とした広々とした作りで、天井まで取られた窓からは春の日差しが差し込んで部屋全体が明るい。
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