春子先輩と僕。
*
放課後。珍しく真剣な遼の妹を前に、僕は春子先輩のことを考えてた。
…もうずっと声聞いてない。もしかして僕のことなんて忘れて、もう他の男と…。
そんな訳ない。春子先輩はちゃんと、僕のこと好き、なはず。
「凪先輩。私にしませんか?」
はっ?
「毎日毎日、悩んで、死にそうな顔してる凪先輩のこと、正直黙って見てられません。」
「そんなの俺の勝手でしょ」
「いいえ。私なら、凪先輩にそんな顔させないし、ずっとずっとそばにいてあげられるし、ずっと、想い続けられます。だから、」
そうじゃないんだって。だめなんだ、それじゃ。
「俺は、毎日悩まされても、何考えてるか分かんなくても、それでも。春子先輩じゃなきゃ、だめなんだよね。」
そうだ。だめなんだ。春子先輩じゃなきゃ。
春子先輩の全てが愛おしいんだ。
朝が弱いところも。
小悪魔な性格で僕を惑わしてくるところも。
考えてることが読めないところも。
全部。僕がむかつくところも、全部全部、愛おしいんだ。
だから僕は、…春子先輩じゃなきゃ、絶対にだめなんだ。
今日も、明日も、この先もずっと。
「…だったら。だったら!!!ウジウジ悩んでないでぶつかってきてくださいよ!私の前で悩んでる素振り見せるからつけ込みたくなるんじゃないですか。」
僕何してたんだろ。
こんなに好きなのに応えてくれないって?
全力でぶつかって拒否されるのが怖いからって逃げてるだけじゃん。
もっと伝えなきゃ、伝わらないかもしれないのに、勝手に諦めてんじゃねーよ。
好きなら、諦めるなよ。待つだけじゃだめだろ。自分から行かなきゃ、だめだろ。
年下の子に、しかも僕のこと好きな子にこんなこと言わせるなんてかっこ悪すぎ。
行かなきゃ、春子先輩に会いに。
「だよね。俺何やってんだろ。…行ってくるわ、ありがと、遼の妹。」
「最後くらい名前で呼んでくれたっていいじゃないですか。」
「ごめん無理。俺には春子先輩がいるから。」
「分かってますよ。…振られたらいつでも相手してあげます」
「上から目線うざ。」
あぁ、いい子だな、この子。振られても絶対頼んないけど、幸せになって欲しい。
そう思った。